家政婦歴30年のキモシナ。
とても、とても控えめな家政婦として働いてきた。
黙々と台所掃除、料理、室内の片付け掃除、庭の草花の手入れ、近所つきあい等の雑多の事をテキパキとこなして行く。
そして、特に無口だ。
家族の者からは「キモシナは空気みたいな存在だ」と言われている。
誰の邪魔にもならず、大切な用事をしてくれて間違いや失敗がない。
完璧なのだ。
透明で一番大切な家庭内の存在が家政婦キモシナなのだ。
家族からはキモシナの存在は透明すぎて、いるか居ないかわからないような時がある。
それほど家族に空気のように溶け込んでいるからだ。
キモシナは大気なのかもしれない。
そんな、関係をキモシナは嬉しく誇りに思っている。
家の中にとても大切な空気がドンと存在しているようなものなのだ。
その空気というか大気が無いと生きてきけない!
今日もコツコツと室内を動き回るキモシナ、だんだん透明に消えていく。