裁判官 コロナ氏

厳格な判断と判決、正しい思い、正しい判断、反省、教訓等・・・・。

姿勢正しく街を歩く彼の姿は不動であり、法律書が移動しているようだと誰かが言った。

街を歩く道順も歩数も決まっている。

その道順、歩数を変えたことはないのだ。

彼の机の上にある書物、ペン他の文具の位置もきちんと決まっており、動かした者が入ると

すぐに分かり、機嫌が悪くなる。

環境位置が決まっており、それと共に生きている。

仕事まえに手洗いを2分間、椅子に座る前に椅子の位置を昨日と同じか床の面と照らし合わ

せる。

今日行う判決を読み直し、その判決が正しいか再度熟考する。

その後、コップ一杯の水を飲む。

そんな日々を送っているコロナ氏だった。

ある日、裁判所へいつものように歩いていると古い友人に声をかけられた。

とても懐かしい声だ。

法律を一緒に勉強していた頃の友人だったのだ。

お互いに笑顔で固い握手をする。

そこまでは良かったが、懐かしい話をしていつもと違う経路を歩き出した時に、コロナ氏は

自分が何処を歩いているのか?何をしているのか?急にわからなくなってしまった。

真っ白な空間に浮かんでいるような感覚に包まれた。

友人は何が起きたのか心配してコロナ氏を裁判所の彼の仕事場まで連れて行く。

おどおとしているコロナ氏に昨日までの威厳も厳格さが微塵もない。

背は丸くなる。

急に100歳の老人になったように人間が変わってしまった。

何十年も同じ時間に起きて、同じ道を歩き、同じ歩数で歩き、同じ式たりに乗っ取って生き

てきたコロナ氏はちょっと道を外しただけで急速に認知症が現れた。

柔軟性が無くなっていたコロナ氏はポッキリ折れた枯れ枝のようになってしまった。

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