ニドの手足は土色に染まっている。
いくら野良仕事を終えて井戸水でよく洗っても土色。
寡黙で静かに農作業に専念するニドは独身者。
家には父母が居てニドが家計を支えている。
ずんぐりして背の低いニドは藁束を作っている時などは藁や土と同化してしまい、見えなくなる。
特に秋口の暗くなりかけのときは畑にニドの姿があるのだが風景に同化して消え込む。
もちろんニド自身はそんな事は知ったことではない。
黙々と農作業を終えて大地と一体になる。
だが、ある村人がニドを遠くの部落で見たという。
やはり黙々と農作業をしていて呼んでも返事はなかったが、ニドに間違いはないと言う。
また、ある村人が「私は町でニドがリヤカーに藁束をたくさん積んで、売っている姿を見た
ぞ」と言うから、たちまち「ニドは消えて他の場所でも仕事して、また戻ってくる神様だ」
と噂が広がった。
妙な噂に気が滅入ったニドは両親に噂話を聞かせた。
すると両親の顔が曇り、母親は涙を流し始めてニドにある秘密をうちあけた。
それはニドは3つ子の長男で、後の2人は養子に出したと言うのだ。
ニドもそれを聞いて驚き、涙を流す。
その後、ニドは別れ離れになった2人と再会し交友が始まり、農作業が広がったそうだ。