時計屋 ダール夫妻

ダメジン・ダール氏

先祖代々の時計屋さん。村で唯一の時計屋さん。修理注文の大繁盛!

夫婦で時計を修理する。

ダメジン氏は腕時計、懐中時計、からくり時計が専門。

妻のポロラは柱時計が専門。

片目に小型ルーペをはめ込み、膝を床に突き、机の高さに目線を合わせる。

これが長時間仕事しても腕が疲れない方法なのだ。

ダメジンは時計の円い形態が好きだ。

なかでもゼンマイを見るとワクワクする。

それは小さいながら鋼が渦を巻き、その反発力で時計を動かす生命力にある。

小さな生き物の心臓を見ているような気がして愛おしくなるのだ。

まるで人間の脈のようなゼンマイの動き、その力が小さな歯車、大きな歯車に伝わり

活発にいろんな動きをさせる。

まさに時を刻む生命を自分が創造している気分になり、

あたかも創造主になったような酔った気分になるから不思議。

からくり時計に関しては自然物を創造している様な自負を持っている。

あまりに朝から晩まで仕事ずくめで、彼の両眼の筋肉はバランスを失い視線が定まらない

妙な目つきになってしまった。

ポロラ・ダールは旦那と反対に大時計が専門。

自分の身の丈もある柱時計の修理に情熱を燃やす。

自分と対等であるかのように柱時計に語りかけながら修理する。

特に内部のチャイムを鳴らす渦巻き状の共鳴リングに心を奪われる。

時間を封じ込めたような懐かしく重い音色の響き、ボーン・ボーン・ボーン

「昔の事まで覚えているぞ!」と言わんばかりの音色が好きなのだ。

自分の人生がその音色に封印されているように思える。

 午後のお茶の時間

二人は仲良く対座してお茶を飲む。

お互いの目玉は左右に振り子のように揺れている。

チックタック、チックタック、チックタック

好きな仕事をする喜びに笑顔がこぼれる。

チックタック、チックタック、チックタック

         ボ〜ン

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