村の怪力男のオウミエルは生まれた時から身体が大きかった。
16歳の頃には村で一番の力持ちになっていた。
ある時、山に山菜を取りに入った村人2人が行方不明になった事があった。
村人総出で遭難した2人を探す。
2人は道に迷って意気消沈して動けなくなっていた。
そこへオウミエルが来て、巨大な2人用の背負子に2人を乗せて村の寄合所まで連れて帰ってきた。
これを見た村長は驚いた。
100キロ以上の重さを担いで山道を歩いてきたからだ。
この評判はたちまちドニ村に広がり、力仕事が必要なときは駆り出された。
その報酬として腹一杯の食事が出た。
村にサーカスや芝居、格闘技、祭りの時期になるとオウミエルの季節になった。
中でも力自慢の格闘技はオウミエルの独壇場だ。 無敵!
それに目をつけた興行師はオウミエルを言葉巧みに誘って地方巡業に連れ出した。
オウミエルは人気者、有名レスラーに変身し天狗になっていた。
数年後に帰村したオウミエルは大きな体と裕福になっていたが、
別人のように村人に対して無愛想でつめたかった。
お金と地位に心を奪われてしまっていた。
その後、八百長ばかりのオウミエルのレスラー巡業は人気がなくなり、
故郷へ帰って来たが誰も相手にする村人は居なくなり、
オウミエルは孤独な晩年を納屋で過ごし次第に痩せていった。
村長が納屋を訪ねるとオウミエルの姿はどこにも無く、
村長の足元に拳ほどの塊の何かが落ちていた。
よく見るとオウミエルではないか!
彼は縮んでしまっていた。