照りつける野原にたった1人で遊んでいる少年。
小さな体に大きな頭部が特徴的な少年。
大きな使い古した帽子は父の愛用の帽子だった。
父は既に他界している。
父が大好きだった少年は父が亡くなってから寡黙な少年になってしまった。
笑顔が消えていった。
太陽のきつい直射を浴びると少年は息を吹き返す。
野原は植物、昆虫の宝庫なのだから。
密かに少年は植物図鑑、昆虫図鑑を図書館から借りて勉強していた。
小さな生き物が動いている、この動いていること自体が不思議に思えるのだ。
果たして昆虫や植物には意識があるのでは? と少年は酷く考えこむ。
小さなカナブンが少年の手から逃れようとする・・。
カナブンはどうして逃げようと思うのか?
小さな魂がカナブンには宿っているからだと少年は確信する。
そんなやりとりが野原で起こるのが楽しいのだ。
植物にしても動いたり、喋ったりしないが花を咲かせるという大きな命がある。
なぜ咲こうとするのか?
その意志は誰が作り与えたものなのか?
少年の夏休みは未知の宝庫になった。